全滅、そして叫び
今日はカウンセリングの日。
朝8時すぎ、お風呂に入っていると、脱衣所から私の携帯の着信音が。
一旦切れたのですが、こんな朝早くに・・・と思い、履歴を見ると、私が先日退職した会社の同僚からでした。
私は元社長秘書という職務柄、現役の同僚とは連絡を取るのを避けていました。
何か詮索されるのも嫌だし、もう社内事情などは聞きたくないからです。
また、私と連絡を取ったということが社長の耳に入れば、たとえ私が秘密遵守したとしても社長も内心穏やかではないでしょう。
でも、着信の時間帯が午前8時すぎだったので、ちょっとだけ胸騒ぎがしてその同僚にに電話をしてみました。
「ごめん、助けてほしいんだけど」
今にも消え入りそうな声が第一声でした。
何事かと思い、尋ねてみると、身体中が痛くて動けない、とのこと。
親に連絡したが今日はどうしても外せない仕事が入っており手が離せないと言われたそうです。
彼(同僚)は、私がまだ現役の頃も、身体中が痛いという症状を訴え、数日間休職したことがあります。
身体中が痛いと言って休職する時は、決まって、午前様までの長時間勤務が続いた時でした。
私が現役中は、「身体中が痛い」の意味がいまいちわからず、過労が祟ったんだな〜くらいにしか思っていなかったのですが、その声を聞いて、おそらく死ぬほど痛いんだな、と思いました。
「また同じような症状なの?」との私の問いに、
「うん、一人じゃ歩けなくて、でも病院に行きたい・・・」
その後、いくつか質問をしましたが、意識が朦朧としている様子で、意味不明な回答ばかり。
救急車・・・というのも頭をよぎりましたが、通院中の病院があるとのことで、とりあえず、車で彼の家に急いで向かいました。
私が現役中、心の支えになってくれた同僚です。
彼だけは嘘をつかないし、部署は違ったけれど同じ役職者として、心から信頼できる人間でした。
辞める時は、定型の挨拶しか出来ず、その後も何度か連絡をくれていたのですが、精神的にも立場的にも応答することができず、でも感謝の気持ちをちゃんと伝えたいな、と心残りだったので、彼を助けたい、と思えたのでしょう。
マンションの前の歩道に座り込んでいる男性1名発見。
彼でした。
助手席のシートを倒し、体を支えて車に乗せて、急いで病院に向かいました。
なんと、私が今日受けるカウンセリングと同じ病院。
ちょっと内心ラッキーと思いつつ、車を走らせました。
病院に到着すると彼はすでに歩くことも困難な様子。
私も、身長が180センチもある男性を支えて歩く力もなく、病院スタッフに相談したところ、車椅子を貸してくれました。
診察までの待ち時間も、
「ってー・・・いてー・・・」の繰り返し。
本当に辛いんだと思いました。
診断の結果、彼は「線維筋痛症」とのことでした。
まだ解明されていないことの多い、難病だそうです。
先生曰く、過労や精神的ストレスが原因でしょう、とのこと。
原因(職場の労働環境)が変わらない限り、対処療法をただ続けることになるが、同じことを繰り返していると悪化が懸念されるそうです。
悪化すると、介助がなければ日常生活を送るのは困難なほど痛みが増したり、痛点に直接痛み止めのような薬を注射しなければならない、など、聞いているだけで恐ろしくなりました。
さらにそれだけではなく、リウマチや膠原病の併発や、激痛による鬱症状や自殺念慮など、相当なリスクが待っている病気だそうです。
前回の受診時よりも症状が悪化しているそうで、先生は、職場の労働環境が変わらないのであれば、退職を勧めていました。
ただ、今は痛みでいろいろなことを考えるのが困難だろうから、1ヶ月くらい休職し、その間に色々考えるのも良いかもしれないですね、とのことでした。
ちなみにこの病院、私もカウンセリングでお世話になっているのですが、マンモス病院のわりに、このように患者の立場にたって、親身に話を聞いてくれる先生が多い。
彼の担当医もそんな先生でよかったと、話をなぜか一緒に聞きながら少し安心しました。
彼に聞くと、ここ1ヶ月ちょっと、退社時間は、ほぼ23時や0時、徹夜に近いこともなんどもあった、休みも月2〜3回しか取れず、先週は土日も出勤だったということです。
胸が痛くなりました。
何も変わっていないんだ、と。
これで、4名の役職者全員が精神、神経、身体を病んでしまいました。
まあ、私は元役職者ですが。
私・・・鬱&パニック障害(退職済み)
彼・・・線維筋痛症(現役、これから療養)
A・・・下肢麻痺(現役、療養1ヶ月経過)
B・・・鬱(現役、定時退社)
Bは不倫等のプライベートの問題が大きく起因しているので除外しても、不倫加護下にいるB以外の全員が、過労と精神的ストレスによる心因性、神経性の病を患い、就業が困難な状態になりました。
求人を出し続けているそうなのですが、求人内容に記載されている労働時間や残業の説明と、面接で説明するそれらとのギャップ、それを明瞭に説明できない、会社にとって都合がいいことだけが明白で労働者にとっては曖昧な労務契約に皆さん辞退するそうです。
また、このような状況になっても派遣や紹介派遣など経費のかかる求人は出していないとのこと。
持論ばかりを唱えている場合ではないんです。
私もそうです。
精神や神経がイカれるということは、人生を左右されるということ。
そこまで追い込んで、会社はなにも変わらない。
そしてまたこう吹聴するんでしょう。
会社の労務管理を正当化するために。
「最近の奴らはヤワだ」
「要領が悪いだけ」
「嫌な仕事、大変な仕事から逃げたいんだ」
「効率化を計る工夫をしていない」
ビジネス書にはそう書いてるでしょう。
でも仕事量がはんぱないんです。
仕事をオーダーする側からの視点では、気づかないのかもしれない。
些細なオーダーなのかもしれない。
でもそうじゃない。
ひとつひとつ、あなたたちがわからない、段取りや修正や組み立てがあるんだ。
些細なオーダーなんて一つもない。
上層部のように、息抜きできる時間もない。
現場の役職者のように、自由に寝たり家に帰ったりできない。
朝起きて、疲れた体に鞭打って、業務スケジュールを簡単に破壊する気分次第で変わるオーダーをこなし、別の上層部からの業務の無茶振りに応え、不誠実な役職者のケツを拭き、隣から聞こえる恫喝に耳を塞ぎ、怯え、やっと自分の業務スケジュール辿りつけるのは21時や22時を過ぎ、期限を守らないやつは不誠実だと言われ、強迫観念で業務をこなし、気づけば午前1時や2時で、虚脱感でいっぱいになりながら帰路につき、栄養の取れないてんやものをただ胃に流し込み、寝る。
そんな毎日に心折れない人がいますか。
月平均残業時間200時間越えの月日に、心が折れない人がいますか。
下肢麻痺の同僚は、そんな毎日に加え、さらに夜勤→通しという、尋常じゃない日々を過ごしていました。
そんな状況下に労働者を据え、ミスが発覚すれば、人間としての基本的人権をかんたんにぶち壊す恫喝がはじまる。
そんな状況下で完璧な仕事ができますか。
やってみろよ、と言いたい。
ミスが不誠実なら、誠実なあなたが同じ状況下でやってみろよ、と言いたい。
「幼稚園のうちの娘だってできる」
なら同じ状況下においてやらせてみろよ、と言いたい。
すでに退職したスタッフが、恫喝が録音されているレコーダーと実際の就業時間を記した書類を持って、労働基準監督署に行ったそうです。
軽くあしらわれ、終わったそうです。
だったら、だれが助けてくれるの。
どうして人生が次々と壊されていることに、誰も気づいてくれないの。
人生を壊しているということに、どうして気づかないの?
気持ちが過去に引きずり込まれた一日でした。
ハッと気づいた時には、カウンセリングの時間は過ぎており、また後日となりました。
課題が増えるなー。